COMPUTEX 2018 で印象に残ったもの

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2018年6月に台湾で行われたCOMPUTEXに内定者研修として行ってきた、インターンの鈴木俊幸です。一緒に行ってきた安齋さんはCOMPUTEXとはどんな展示会なのかについてレポートを書いてくれたので、自分は以下の観点で見たときにどういう展示物が印象に残ったかを書きたいと思います。

  1. 協業の可能性
  2. ダウンサイジングされている箇所
  3. どんなコミュニケーションロボットがいるか
  4. 面白いデバイスを見つける

 

1.協業の可能性

 自社のサービスをより良くできるのではないかというプロダクトを探してきました。

公分級室内位系統 AI級 [STARWING社]

 高精度の室内用位置測定システムです。従来の位置計測システムには、GPS、加速度・ジャイロセンサ、画像処理、電波を使ったものと様々なものがありますが、このプロダクトではBluetoothを用いて室内の位置測定を行います。BlueToothの指向性が高い基地局を設置して、独自のAIエンジンによって位置測定を行うことで精度の高い測定が行えます。位置情報の更新は5cm動いた程度でも反応するそうです。誤差は10cm~30cmほどで、すごい技術です。弊社のようにPepperなどの移動ロボットを扱う上では、ロボット周辺に人がいる中でロボットの自己位置をどうやって取得するかは重要な課題です。BlueToothの電波を用いているので人がいても阻害されません。

参照: STARWING HP/ https://www.starwing.com.tw

LABAU

 こちらはディスプレイモニタを作っている会社です。レジのキャラクタLCDモジュールや、20~5inchあたりのディスプレイを製造販売しています。ミニマムスロットでは一台からディスプレイを販売してくれます。7inch以上のモニタにはOSが付属し、OSはAndroid or Windowsから選ぶことができます。さらにディスプレイにはPOS機能といいますか、小さい紙を印刷する機能がつけられるので、発券システムを構築する際に利用できそうです。

参照: LABAU HP / http://www.labau.com.tw/

Nymea

 IoTデバイスをよりセキュアにするIoT用のOSです。ベースがUbuntu Coreでできていて、無料配布されているそうです。自分の英語力では正確に読解することはできなかったのですが、出展企業の方はNymeaをいれたIoTデバイスはセキュアになることを説明してくれました。Wifiにつながるロボット達のセキュリティ問題を解決または参考にできればいいなと思いました。NymeaはRaspberry Piにいれることができますが、Sotaくん用のRaspberry Piで動いてくれるかは不明です。。。

2.ダウンサイジングされている箇所

 社内で行われたComputex事前勉強会を受けて、メンバーからどのような部分がダウンサイジングされているのか気になるから見てきてほしいという要望があり、その点を調べてきました。

KicoBox

 スマホアプリで遠隔操作可能な教育用プログラマブルロボットです。スマホからは移動、音楽をかける、表情を変える、光る等の指示ができます。表情自体は可愛いので愛着がわきそうな感じがしました。出展企業の方にこのロボットの一番重要なところを聞いたところ,「Logic」と返答し、メンタルスクールの子どもたちにLogicを学ぶために使って欲しいとのこと。ArduinoとSketchでプログラミングすることが可能なので、子どもたちが簡単に楽しく論理的な思考を鍛えるのにつかえます。この教育用ロボットの特徴はロボット自体の出力機能(動作、光、表情、音)を増やし、入力機能(ライントレース用フォトリフレクタのみ)をシンプルにして、ダウンサイジングしたものだと考えられます。個人的には教育ロボットは出力機能と入力機能(カメラ、センサ等)をどれだけ豊富に揃えてあげるかが子供の想像力を掻き立てる鍵なのではと考えていました。しかし、このロボットは外界センサとしてフォトリフレクタしか所持していないため、音声入力もできないうえ、カメラも付いていないのですが、その制限により、子どもたちは、プログラミングをシンプルに考えられ、論理的思考を鍛えることができます。特に対象がメンタルスクールの子供たちといっていたため、シンプルな機能を組み合わせて論理的思考を鍛えてほしいようです。表情の出力もダウンサイジング感を感じるシンプルで簡易的なOLEDディスプレイを使用していました。表情を表現できれば、最低限のものでいいという考えだと思われます。ターゲットを絞ったことで無駄な機能を削ぎ落としたいい例だと思います。


参照: KicoBox- A Robot like Rubik’s Cube to Teach Coding / https://www.kickstarter.com/projects/kickduino/kicobox-my-first-coding-teacher?lang=ja

3.どんなコミュニケーションロボットがいるか

自社の強みであるロボットアプリケーション開発技術を活かせるような、PepperやSota以外のコミュニケーションロボットについて調べてきました。

Ayuda [The syscom group社]

 こちらは弊社と方向性の近いプロダクトです。Pepperをより強化したような容姿をしている、胸にタブレットのついたコミュニケーションロボットです。利用用途としては教育、病院、銀行などの案内で活躍することを考えているそうです。銀行の受付では具体的には、為替レート等の案内をしてくれるそうです。カメラから人の顔を検知・認識し、人の顔のデータをクラウドに保存して、二度目以降に会った相手には名前を呼んで挨拶するらしいです。ロボットのアプリケーションとハードウェアは両方とも内製らしく、外の企業はロボットアプリケーション開発に携われません。見た目のデザインとハードウェアはダウンサイジングした箇所だと勝手に考えてました。ガンダムのようなヘルメットをかぶっていますが、目がただの黒い点なのでなんとなく自分には不気味な感じがします。。。ロボットが手をふるたびに、「ぎぃぎぃ」音を立てて動きます。自分はPepperのほうが好みです。

robelf

 顔がディスプレイの見守り家庭用コミュニケーションロボットです。ロボットに備え付けられたカメラが取り外せ、室内に設置出来たりするので、監視カメラ+ロボットのイメージが強いです。スマホから遠隔操作ができ、移動、手の操作、顔の表情などを遠隔で変えられます。カメラには人物の認識機能がついており、その人にあった行動をさせることができます。一番の特徴はユーザーがプログラミングできる「Bahaiver cording」という機能だと思います。ユーザーはブロックのコードを組み合わせることで、スマホ上でロボットの簡単な動作をプログラミングできます。デモでは、母親として登録された人がhungryと言ったら、ロボットが悲しい表情をするという簡単な例を見せてくれました。スマホからユーザーがプログラミングできる機能は、知らない人が家の中に侵入したら、家族に連絡するなど泥棒対策をしたり応用がききそうです。ユーザーにプログラミングしてもらうという発想は新しいなと思いました。本格的な開発に関しては、外部の会社の開発者もアプリケーションを開発することができます。実際に、顔のディスプレイでエディタ風の画面を見せてもらえました。ちなみに人の年齢予測機能がついてたので、やってみたところ、自分の年齢が25歳、安齋さんは26歳、深井くんが34歳でした(ちなみにみんな20代)笑。出展企業の方にSotaくんを見てもらったら、Sotaくんを知っていそうないいリアクションをしてくれたので、仲良くなれそうな雰囲気でした。

4.面白いデバイスをみつける

個人的にデバイスが好きなので、面白いデバイスがないか調べてきました。

kingtecの展示物の一つ、ハートのギア

 こちらは歯車でできたハートです。3Dプリンタでは、生成と組み立てを同時に行えるため、組み立て不可能な機構も生成できます。思ったよりきれいに回りました。kingtec社の3Dプリンタではこのレベルの精度は作れるようです。歯車のモジュールを小さくしたらどこまで歯を小さくできるのか気になるところですが、歯車好きには3Dプリンタはいいかもしれません(弊社には歯車好きの個性的なメンバーがいます)。

ORII

 電話をサポートするデバイスです。指輪型のデバイスでBluetoothでスマホと連携します。指輪型デバイスを指にはめ、その指を耳付近の骨に当てると骨伝導で電話することができます。実際に試したかったのですが、ブースが人気すぎて試すことができなったのでとても残念でしたが、体験している人のリアクションを見ると、ちゃんと電話ができてそうな様子でした。骨伝導といっても指を介して頭蓋骨に響くので、どんなものなのか本当に試したかったです。デバイス自体シンプルで、かっこいいデザインでした。


参照: ORII – The Fastest Way to Send Messages Without a Screen / https://www.kickstarter.com/projects/187732114/orii-your-voice-powered-smart-ring?lang=ja

Mplayer3D

 3D映像をスマホで見るためのスマートフォンのフィルムと3Dビデオプレーヤーの技術です。スマホに特殊なフィルムを貼り付け、Mplayer3Dというアプリで動画を再生させると一つのスマホで3次元の映像を楽しむことができます。イメージとしては、3Dゴーグルを目ではなくフィルムとしてスマホに貼ってしまえという発想です。技術としてはスマホのインカメラを利用して、ユーザーのアイトラッキングを行い、そのユーザーに3Dに見えるような映像を表示しています。実際にやってみた感想としては、本当に3Dに見えました。Nintendo社の3DSという製品の3D映像は奥行き方向に立体感を感じられる製品でしたが、この製品は画面から飛び出すような立体感を感じることができました。躍動感のある映像を楽しめそうです。技術的にはアイトラッキングを行うため、3Dで映像を見れるのは最大一人までとなってしまいますが、それでも十分だなと思える3D体験でした。ダウンサイジングされていそうなポイントは、ユーザーを切り替えたときの設定にありそうだと思いましたが、ユーザーの操作に少々手間がかかっていたため、そのあたりが今後アップデートされていくのではないかと思います。

台湾での他の楽しみ

 ご飯で美味しかったのは鼎泰豐という店の小籠包は印象的でした。小籠包だけで5種類ぐらい楽しめ、鶏肉系、カニ系、などがありました。小籠包は丁寧に包まれた皮の中に、これでもかというほど肉汁がたっぷり入っており、どの小籠包でもとても美味しかったです。

総括

 この展示会で全体を振り返って思ったことは、「本気さ」と「準備の大切さ」と「プロダクトを丁寧に見る大切さ」の大きく3つです。

 まず、出展企業の方の話を聞いていて最も印象に残ったのが、「伝える」のに本気だと感じました。どの出展企業の方も丁寧な説明をしてくれたのです。自分がめちゃくちゃな英語で話そうとも、明らかに商談する権利をもっていないとわかろうとも、展示している商品について丁寧に、本気で説明をしてくれました。以前、日本のロボット国際展示場に遊びに行ったとき、技術的な説明がわからず鼻で笑われ適当にあしらわれた経験があり、今回の展示会では伝えることに本気な人たちに出会い、驚きました。

 次に、展示会の視察は準備が成否を決めるなと思いました。どういった目的で、何を持ち帰ってくるべきなのかを決め、そのために何を準備するべきなのか考えて準備していくと得られるものがより多くなりそうです。展示会に向かう電車の中で三ツ堀さん(弊社代表)にも教えてもらったのですが、とある会社では、こういう展示会になると、商談ができそうな候補を100社ぐらいリストアップし、この会社とはこういう目的で、こういう話をするというのを決めておき、当日展示会をどのようなルートで回るかのタイムテーブルまで作成するようです。流石にそこまでできないと思いますが、技術の調査、Unicastの方向性を知ること、英語の準備をしておくことは必要だったと感じました。予めどういう技術があるかを知っていなければ、新技術の展示を見たところで、何が優れているのかがわからないですし、Unicastとどういうコラボの仕方があるのかを日本で話し合っておかないとどういう出展を見たらいいのかわかりません。現地では決められません。「目的」→「持って帰ってきたいもの」→「準備」の順で事前に考え、準備しておけたら得られるものは多くなりそうです。

 最後に大きい展示会を視察するときに、一つ一つのプロダクトを丁寧に見る感覚は重要だと思いました。COMPUTEXは広い会場に数多くの展示ブースが並んでおり、なにも考えず回れば、「あっちに面白いのがあるな、こっちに面白いのがあるな」と目移りしてしまい、終わったあとは、たくさんのものを見たけど、なにも残らないというようなことが起こってしまいます。そして、よく見ないと良さがわからないのもCOMPUTEXのポイントだと思います。プロダクトの優れている点はパッと見ではわからないのです。一つ一つの製品を細部までよく見て、どういうところがポイントなのか、なぜそこをポイントにしたのか、開発者はどういう思いで作ったのかを考えながら見て、聞くと、そのプロダクトの良さがわかってくる気がします。

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鈴木俊幸

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